モルヒネ/安達千夏【読書感想・書評】

 

 

奥行きの深い表現に、幻想的な長い長い唄を聞かされているような感覚を与えられる一方で、

決して揺らぐことのない事実(死)を突き付けられる。

そんな、不思議な気持ちにさせられる本書、

モルヒネは「死」について考えざるを得ない著書でした。

 

著者情報

モルヒネの著者、安達千夏さんは山形県生まれの作家さんです。

デビューのキッカケは、1998年「あなたがほしい」という作品ですばる文学賞を受賞したからだそうです。

たまたま実家に帰ったとき、父親に渡され本書を知ったので、

自分も安達さんの著書を読むのはこれがはじめてとなります。

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モルヒネのあらすじ

真紀という小学2年生の女の子が、自宅のベッドで死んでいる姉を見つけるところから物語ははじまる。

姉の死因は、前日父親に暴力を受け、あたまを強打したことによる蜘蛛膜下出血。

このとき2人の母親は自殺していて、すでにこの世にはいませんでした。

時計の針はグルグルとまわり、真紀は31歳になる。

職業は医者。

人を救いたいから、お姉ちゃんのような人を1人でも助けたいから医者になった。

…というわけではなく、子どものころ製薬会社に努める女性に教えてもらった「苦しまない死に方」を可能にするのが医者だったからだ。

 

姉が死んだとき、自分も死んでおけばよかった。

 

そんな想いをずっとこころに抱く真紀は、いつでもかんたんに死ぬことができる環境に身を置くことで、何とか自身の生をとりとめていた。

ある日、真紀は昔の恋人に自分の働くクリニックで再開する。

その男の名は「ヒデ」

真紀はクリニックの院長と婚約中だったが、ヒデとの再会にこころは大きく揺さぶられる。

というのも、ヒデは真紀の過去をすべて知っている数少ない人間のひとりだからだ(真紀は自身の過去を婚約者にさえ隠している)

ヒデはピアニスト。

真紀とヒデが別れたのも、ヒデがピアノを弾きに、勝手に海外へ行ってしまったのが原因だ。

しかし、その日クリニックで会ったヒデは、もうピアノを自在に弾くことはできない体になっていた。

余命3ヶ月の末期ガン。

ヒデのからだはこのときすでに手の施しようがないほど傷んでいた。

 

いつでも楽に死ねることを前提に生きる真紀。

あと少しで死ぬと宣言されたヒデ。

本書は、そんな2人を中心に「死生観」について色々な考えに触れるができる、恋愛物語です。

モルヒネ
読書感想・書評まとめ

正直、泣くことはありませんでした。

重いはなし、痛々しいはなしに違いはないのですが、個人的にはそこまで感情移入することもなく読み終えました。

個人的に良かったなと感じたのは、スッキリするような答えやラストが本書にはない、というところ。

「死生観」だけではなく何でもそうだとおもいますが、結局は人それぞれなんだから最後は自分で考えな!という余白を残したまま本書は幕を閉じる。

そのあたりがぎゃくに奥深く、読後も本書について、死について、考えさせられることに自分はなりました。

また、モルヒネを読むなかで自分がいちばん素晴らしいと感じたのは「世界をどう切り取り表現するか」ということについてです。

写真で切り取った日常とでもいうか、そんな機械的な風景描写ではなく、人の目というフィルターを通ったことで熱をも感じさせられるような描写が、とても素敵だなと。

真紀本人の目玉をつけて物語の中をのぞき見ることができる表現に、ぼくは冒頭4行ですでに痺れさせられました。

また、生活のなんてことないワンシーンもことごとくユニークでした。(例えばクリニックと書かれてある車にのっていれば、ムリに割り込む若者はいないといった)

読者を釘付けにする文章は、「速読なんて許さない!」と作者に胸ぐらを掴まれているかのような感覚を覚える、存在感たっぷりのものでした。

 

奥行きの深い表現に、幻想的な長い長い唄を聞かされているような感覚を与えられる一方で、

決して揺らぐことのない事実(死)を突き付けられる。

そんな、不思議な気持ちにさせられる本書、

モルヒネは「死」について考えざるを得ない思考を深める著書でした。

それでは!また!

 

 

 

 

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